講義 民事訴訟

講義 民事訴訟

著:藤田広美 版:東京大学出版会 2007.12
新世代のための民事訴訟法スタンダード名著基本書の誕生基本書ではなく導入書わかりやすくて論理的

講義 民事訴訟法 藤田広美 注目。きら星のごとく登場した旧訴訟物理論の本。「民事訴訟法講義案(司法協会)」の著者による単独執筆である。民事訴訟法講義案は裁判所書記官研修所のテキストとして書かれているので、手続の細かい部分まで非常に詳しく書かれているが、本書ではその細かい部分を端折っている。
 元裁判官の経歴をもつ藤田広美先生が、裁判実務と法科大学院での講義経験を生かして、民訴の基本的構造と手続ルールを分りやすく解説する。何でも書いてあって調べるための辞書といった風のいわゆる基本書ではなく、同じ東京大学出版会の「内田民法」風であるといえば話が早いだろう。講義スタイルの「ですます調」で、初学者・独習者にもやさしい。要件事実について十分な解説があることも見逃せない。528頁、横書き、二色刷、旧訴訟物理論、実務色。

 

講義 民事訴訟法 藤田広美 著 まえがき

 私は、平成19年7月1日をもって裁判官の職を辞し、法科大学院教員として、民事訴訟法、倒産処理法等の民事法講座を担当することになりました(経歴等 については「あとがき」に記します)。法科大学院での限られた時間を有効に活用し、法的分析能力及び思考力、そして創造的発想に基づく充実した演習を行う 講座となるようにするためには、民事訴訟法の基礎知識と訴訟実務に関する基礎的理解が教員と学生との間及び学生相互間であらかじめ共有されている必要があ ると考え、私がこれまで裁判所書記官養成のために行ってきた講義を再現するとともに、対象者の相違等を強く意識して修正を加えた自習用教材を作成すること としました。法曹として必要な想像力と創造力を養うには、優れた学術論文、体系書の熟読等に基づく問題的及び体系的思考と全体を見通す視野の広さ、優れた 判決文を検討することなどによる事案分析の確かさ等が不可欠であると考えていますが、本書はそれらの思考領域に速やかに移行するためのステップとなるよう に、民事訴訟の理論と実務の架橋を意識しながら、相互の理解を深めていくために必要となる知識を整理し、そして思考を掘り下げるきっかけを売るための教材 として、民事訴訟心理の基本構造と民事訴訟法に手続ルールを解説するものです。



ですます調の講義スタイルで、図表を用いたビジュアル系。横書き2色刷

 



二段の推定の図解

文書不提出の効果についての解説部分アップ

 

 本書の特色は、訴訟手続を運用する支店から、審理(実質)と手続(形式)の規範構造をできるだけ明確にして、民事訴訟法が予定する審理モデルを明 らかにしようと試みたところにあります。そのために、第1に、基本的な制度の趣旨や機能を出来るだけ丁寧に、繰り返しをいとわず、むしろしつこいくらいに 記述するとともに、可能な限り構造化した上で、その現実的な機能を明示するように努めました。第2に、理論と実務の架橋を意識して、要件事実論の基本的な 発想や訴訟運営のあり方について検討を加えたり、解釈論的対立が実務の訴訟運営にどのような影響を与えているのかなどといった実務的観点を書き込んでみま した。これらは講義であるならば、当然に触れられるべき事であって特色とは言えないのかも知れませんが、これを敢えて文字情報にしてみたところも、本書の 特色であると思います。民事訴訟について骨太の理解(民事訴訟の全体構造の鳥瞰的理解とそれを構成する基本的なパーツが担う機能の構造的理解)を得るとと もに、理論と実務の架橋を図るには有益なものであると信じています。

 私が初めて学んだころのテキストに描かれていた民事訴訟法は、裁判官の視点で考える法領域であって、そのイメージは、「底辺のない三角形」であったとい えます。ところが、現在は当事者間を直接的に規律対象とする制度や裁判所を介しない訴訟法上の制度も創設されるなど、構造上は当事者にも主導権のある民事 訴訟法へのパラダイムシフトが起きていると考えます。「底辺のある三角形」になったわけです。この教材は、「裁判官としてのプラクティスと研修所教官とし てのスキル&マインド」とから生まれました。これからは、上記のようなパラダイムシフトと軸を一にして、「弁護士としてのプラクティスとロースクール教員 としてのスキル&マインド」を磨くことによって、この教材の進化と深化を図りたいと考えています。もっとも、今回の執筆に際しては、裁判官の感覚が残るう ちに学生諸君の手元に届けたいという思いから短期間の内に一気に書き上げなければならないという時間的制約があったため、民事訴訟法の領域をフルカバーす ることはできませんでしたし、思わぬ誤解をしているところがあるかもしれません。股、本書の基礎が講義の再現であることから、繰り返しが多いところを含め て、記述の精粗のバランスを欠いていると思われるところもあります。これらについては、今後、授業・演習で使用しながら補充・修正してゆきたいと思ってい ます。なお、本書の執筆に際しては、数多くの先行業績臭っていることは自覚しつつも、講義の再現に基づく自習用教材としての本書の性質上、文献を掲げるこ とはできませんでした。ご海容いただきたく思います。

 本書の執筆を勧めてくださった東京大学出版会編集部の羽鳥和芳氏には、多くのアドバイスをいただくとともに、非常に厳しい時間的制約の下、ご苦労 をおかけしました。同氏なくして本書はあり得なかったと思います。また、同編集部の矢吹有鼓氏は、索引の作成等非常に忍耐を要する仕事を的確にこなし、本 書の基盤作りに貢献していただきました。加えて、宮國英達弁護士(そよかぜ法律事務所)は、自ら進んで校正の労をとってくださいました。ここに記して感謝 の意を表します。
 本書は、法科大学院で民事裁判実務の基礎を学ぶ学生を対象に執筆しましたが、以上のコンセプト、特色からすれば、司法修習生、 司法書士、裁判所書記官はもちろん、はじめて単独で訴訟事件を担当する若手裁判官等にとっても参考になるところがあるのではないかと密かに自負していま す。本書が、民事訴訟と民事裁判実務の基礎を学習しようとする皆さんの助けとなることが出来れば幸いです。

       Good Luck!

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