事例研究行政法

事例研究行政法

著:曽和俊文 金子正史 版:日本評論社 2008.5

 事例研究行政法 (単行本) 良書。憲法とセットで登場した。憲法、行政法の2冊ともが新司法試験での出題スタイルにフォーカスしている。長文事例における対立当事者の主張から問題点を抽出させる形式。現代的な問題点を扱う練られた格好の素材である。答案作成にあたってのヒントが満載。

 

写真つきレビューと端書きと

 

 

 

事例研究 行政法 曽和俊文・金子正史 編著 はじめに

 現代社会では、経済規制行政やまちづくり行政や社会保障行政など様々な行政活動が行われている。そして、これらの御製活動のあり方に関して、国・公共団 体と国民・住民との間で法的紛争(以下では、「行政紛争」という)が生じる場合も少なくない。本書は、様々な行政領域での具体的な行政紛争事例を素材とし て、行政法学上の諸問題を分析・検討したものである。はじめに、本書の狙いや特徴などについて簡単に説明しておきたい。

 1.事例研究の意義

 具体的な行政紛争事例では、行政法の一般理論の理解の他に、個別法の解釈が求められる。例えば、マンション建設に対する周辺住民の反対運動が法的紛争と なる場合には、当該地域が都市計画法上いかなる地域であるのか、建築基準法上の規制が正しく適用されているのか否かなどを確認する必要があり、都市計画法 や建築基準法の基本構造や主要条文の解釈が求められる。ラブホテルの建設に対して条例でいかなる規制が出来るかを考えようとすれば、風営法や旅館業法の規 制の仕組みに対する理解が求められる。最近話題になった食品の安全性についてきちんと理解しようとすれば食品衛生法に対する理解が必要である。このよう に、現実の行政活動は都市計画法や建築基準法や風営法や食品衛生法などの個別法律に基づいて行われているから、行政活動の法的統制もこれら個別法の解釈を 抜きにして考えることは出来ない。
 行政法についての知識を得るためにはまず行政法の教科書を読むことが求められる。しかしながら、行政法の教科書は、個別行政領域の差異を超えて一般的に 妥当する法理について説明するものであるから、抽象度が高く、初学者にとって理解しにくいものである。また、教科書にまとめられた行政法の一般的な法理を 理解しただけでは、具体的な行政紛争事例を的確に分析するのが難しい。行政紛争事例の解決のためには個別行政制度の分析が不可避であるからである。
 本書は、具体的な行政紛争事例を素材として、行政法が苦情の諸問題を分析・検討したものである。具体的な事例に含まれている個別行政制度について詳しく 解説するとと同時に、教科書等にまとめられた行政法の一般的な法理が実際にどのように適用されるのかについても検討している。本書によって、行政法の一般 理論に対する理解が一段と深まるであろうし、具体的な紛争事例に即して、種々の行政制度の仕組についての理解も得られるはずである。行政法の基本的な知識 を一通り修得した者が、さらに行政法の応用力を身につけるために、本書は最適の教材となることだろう。

 2.法科大学院での実践

 本書の執筆者はいずれも法科大学院で行政法の授業を担当している教員である。司法制度改革の一環として法科大学院が設立され、行政法が新司法試験の必須 科目となったために、行政法研究者の多くが法科大学院教育にも携わることになった。ところが旧司法試験で行政法が試験科目でなかったこともあって、学生の 多くは行政法の基本的な知識も少なく、また、行政法に対して苦手意識を持つ学生も少なくなかった。いかにして学生に行政法の基本知識と考え方を伝えるべき か、法科大学院教員としての試行錯誤が続いている。
 過去2回の新司法試験ではかなりむずかしい事例問題が出題されたこともあって、学生の間からは、事例問題演習の要望が寄せられることがたびたびあった。 たしかに、現実に法曹となって活躍するためには、具体的な行政紛争の解決力が求められているから、法科大学院において事例問題を素材として行政法を教える ことは必要なことである。そこで、各法科大学院では、期末試験などにおいて、行政法の事例問題を出題し、それらを解説する中で学生達の行政法についての実 力アップを図ろうとしてきた。本書で取り上げられた事例問題のほとんどは、実際に、執筆者が所属する法科大学院での期末試験で出題・採点・解説された問題 である。
 本書の解説では、個別行政制度の解説や御行政法の一般理論の説明の他に、学生が見落としがちな論点や学生が陥りがちな代表的な誤りについて、解説やコラ ムで特別に取り上げている。学生の疑問はかならずしも学生の勉強不足からだけ生じているわけではない。学生の疑問に謙虚に耳を傾けることによって、これま での行政法教育の不十分な点、あるいは、これまでの行政法理論の弱点を反省するきっかけとなることもある。本書では、解釈と裁量の区別、裁量基準と個別的 審査義務との関係、申請と届け出の区別、処分性の判断の仕方、裁量の司法審査基準など、学生が疑問をもつこれらの論点について可能な限り突っ込んだ丁寧な 解説を心がけている。こうした努力によって、本書は、法科大学院で行政法教育を担当している教員にとってもいくらかは示唆するところがある内容となってい るのではないかと自負している。
 このように、本書は法科大学院での教育実践と学生との対話の中で生み出されたといえるのであって、この点が本書の大きな特徴である。

 3.本書の構成と活用方法

 略

 4.本書作成の経緯

 略

 長文事例ベースの演習書。モノクロ、横書き、答案化を意識した解説内容

 

ここがすごい。ワンポイントアドバイスで、陥りやすい勘違いをただし、わかりにくい箇所を丁寧に解説する。

 

 

行政個別法の条文や、長文資料の添付などは新司法試験を見据えた内容である。有名ロースクールで出題された期末試験がベースになっており、研究者教員の解説、ミニ講義、コラムが付されている圧巻の内容。