論点解説 新会社法 千問の道標

論点解説 新会社法 千問の道標

著:相沢哲 葉玉匡美 郡谷大輔 版:商事法務 2006.6

論点解説 新会社法 千問の道標 約800ページ、1000問で基本知識を完全制覇。会社法の立案担当者(葉玉検事・相沢参事官・前民事局付きの郡谷氏)が、平成18年5月の施行を迎えるまでの間に著者ブログ等に寄せられたさまざまな質問に対して、具体的かつ専門的に解説するもの。
 端的な問題に対して、いちいち的確に解答を付していくQ&A式の構成で、内容は実務的な問題もあれば、超基本的な知識問題まである。新会社法の体系(条文配列)に準拠して編纂されており、最初の問いは、『Q1 株式会社の設立手続はどのようなものか』である。このような、ちょー基本的な知識から説き起こす筆者らの気概が伝わってくる。これは本気の一冊である。
 

 

 続く他の問題は次のような感じだ。『Q183 株式譲渡はどのような場合に制限されるか。』『Q198 株式会社はどのような場合に自己株式を取得することができるか。』『Q461 取締役会設置会社においては、内部統制システムについて、取締役会で、どの程度具体的に決定しなければならないのか。』『Q46 ある発起人が、設立時発行株式の割り当てを受けたが、出資の履行をしないまま設立した場合、その設立は有効か。』『Q7 発起人が、発起設立をして成立後に株式を募集するのではなく、募集設立をを行うことに、どのようなメリットがあるか。』
 上のような問いを見ると分かると思うが、千問の道標は、新司法試験の択一試験はもちろん論文試験にも有用だと思う。例えば、弁護士に法的アドバイスを求めるパターン(ビジネスプランニング)の論文試験問題などでは特に、であろう。

 

論点解説 新・会社法 ~千問の道標~ (商事法務) はしがき

法務省大臣官房参事官 相澤 哲
法務省民事局付検事 葉玉匡美
前法務省民事局付 郡谷大輔   編著

 平成17年7月26日に公布された「会社法」(平成17年法律第86号)が、平成18年5月1日に施行された。
 「会社法」は、わが国の「会社法制の現代化」を図るため、中小会社法制の総合的な見直し、株式会社における定款自治の範囲の拡大、合併等の組織再編行為に係る規律の一層の合理化等、会社に関するさまざまな制度のあり方について、従来の規律を体系的かつ抜本的に見直し、現在の社会経済情勢にふさわしい会社法制の構築を目指すものであり、これにより、経済を支える基本的な仕組みとしての会社制度がより合理化・国際化され、活用しやすくなることが期待される。

 「会社法」においては、会社法制全体について、さまざまな事項につき従来の規律の見直しが行われている。特に、従来の商法第2編、有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律等の各規定について、片仮名文語体で表記されているものの平仮名口語体化等を行い、1つの法典として再編成するという作業を行うにあたっては、それらの全ての規定につき、その歴史的経緯等に縛られることなく、内容の合理性・妥当性の吟味をする作業が必須となり、結果として、細目に至る点まで相当広範囲にわたり多くの事項について改正が行われている。
 このような「会社法」の理解の参考にしていただくため、その公布直後に、旧法からの実質的な改正点を中心に、その概要を一問一答式により解説した「一問一答 新・会社法」を編んだところであるが、その後、会社法の施行を迎えるまでの間によせられたさまざまな実務上の質問等を踏まえ、「会社法」の主要論点についての解説を試みるものとして、本書を出版することとした。また、本書においては、「会社法」に基づき制定された政省令の内容についても触れている。

 本書の執筆は、法務省民事局において「会社法」およびその政省令に立案作業にかかわった、編者らおよび松本真、湯川毅、細川充の画民事局付、和久友子民事局調査員ならびに山本憲光、小舘浩樹、豊田祐子、石井祐介の各弁護士(前民事局付)が分担して行った。なお、記述の内容中、意見にわたる部分は、もとより執筆者の個人的意見にとどまるものであるが、各項目につき立案担当者としてどのような問題意識を有しながら立案作業にあたっていたかを示すものとして、参考にしていただければ幸いである。

 前著につづき本書の刊行についても、株式会社商事法務の小野寺英俊氏に献身的なご協力を頂いた。ここに深く感謝の意を表する次第である。
 本書が、「会社法」の解釈・運用に携わられる多くの方々に幅広く利用され、わが国の会社制度のより一層の適切な活用に役立つことを期待したい。

平成18年 5月  法務省大臣官房参事官(民事担当) 相澤 哲

 新しい酒は新しい革袋に

 筆者らは、ここ数年の商法・会社法改正の立案作業に携わる中で、会社関係者のさまざまな思いを会社法制の中に織り込むために彫心鏤骨の日々を送ってきた。

 「資金の乏しい起業家でも会社を設立できるようにして欲しい」
 「通知公告や登記などの手続を少しでも簡素化・合理化できないか」
 「株式や社債を使って、より低コストで迅速な資金調達をしたい」
 「会社が構造改革を進めていくうえで障害となっている商法上の規制を撤廃してほしい」
 「経営陣に対する監督が形骸化しているのではないか」
 「会社の運営を透明化し、適切な内部統制を実現できるような仕組みをつくりたい」

 平成17年7月に会社法が、平成18年2月に会社法施行規則・会社計算規則・電子公告規則が公布され、そうした思いが、あたらしい会社法制として結実した。
 会社の行動を束縛することに主眼を置いていた昭和の会社法制は、数度の商法改正を経て徐々に姿を変えていき、会社法の成立により「会社の健全な活動を助力する法」として生まれ変わった。

 もっとも、個々の会社における真の規範は、日々の実務の中で構築されている。
 昭和の会社法制を前提とした古い実務規範の中には、新しい会社法制を押し込めようとすれば、その自由闊達な味わいはすべて失われることとなろう。
 逆に、合理性の失われた因習を廃し、効率性と適正性のバランスの取れた実務規範を再構築すれば、これまでとは比べものにならないほど迅速で健全な会社運営を実現することができるであろう。

 筆者らは、会社法の施行に向けて定款や内規の見直しを進めている実務家から、毎日数十件もの質問を受ける。
 それらの質問は、会社法制の改革を自社の発展の原動力とするために条文を真剣に検討した結果から生まれてくるものであるため、すべての会社にとって有用な普遍的なものも多く、新しい実務規範を構築する上で、また、今後生ずるであろう会社を巡る諸問題を解決する上で、貴重な資料となるものと思われる。
 そこで、筆者らは、本書において、それらの質問の中から、会社法、会社法施行規則、会社会計規則を読み解くために必要な基本的問題や、実務に不可欠な問題を選別し、その回答と理由を簡潔に示すこととした。

 もとより、会社法令の最終的な解釈権限は裁判所にあり、また、本書の回答が法務省の公式見解というわけでもない。
 しかし、新しい酒を新しい革袋に盛ろうと日々腐心されている実務家の疑問に、筆者らが真剣に考えた回答を示すことが、新時代の会社実務を切り開くための一助となるならば、筆者らの欣快とするところである。

平成18年5月 法務省民事局付検事 葉玉匡美

 柔軟・中立的な制度を目指した会社法

 平成18年5月1日、「会社法」およびその関係政省令が施行された。
 会社法制に関しては、平成11年の株式交換・株式移転制度の創設以降大改正時代を迎え、私が改訂作業に携わることとなった平成13年以降も、いわゆる「金庫株」の解禁、新株予約権の創設、種類株式の柔軟化、委員会等設置会社の創設、株券不発行制度の整備など、会社法制の全般にわたり、従来の枠組みを大きく変更する改正が行われてきた。

 「会社法」の制定は、こうした近時の改正の延長線上のものであり、その実質改正事項の多くも、近時の改正の総まとめ的なものであると評価することができるだろう。ただし、これらの改正は、実務界のニーズを査定し、又は後追いする形で制度を整備するという従来型の改正とは異なり、実務界のニーズを含めて旧商法において指摘されていた各種の問題点等について文字通りゼロベースでの検討を加えたうえで、会社およびその関係者にとって、合理的でない不利益・不都合を与えないことを目的として、可能な限り柔軟、かつ、中立的な制度を整備しようとした結果のものである。

 一行政官としては、このような会社法制の変革期に、会社をめぐる制度設計の一端を担う仕事ができたことは、大変な「幸運」に恵まれたものと思っているが、会社法の運用に携わる方にとっては、会社法で整備・創設された制度の中には、見慣れない制度、利用方法が必ずしも明らかではない制度も多いであろうし、会社法をめぐる疑問・悩みを持ち、大変な「不運」と感じられていらっしゃる方も多数存するものと思われる。

 本書は、こうした新たに整備・創設された制度のほか、従来から問題となっていた点も含めて、会社法及びその関係政省令に関する様々な論点について、立案担当者としての一応の見解を明らかにしようとするものである。本書を利用することにより、会社法およびその関係政省令を利用される実務家の方々が、会社法制を円滑に、多様に、合理的に、そして積極的に運用・利用していただけることとなれば幸いである。

平成18年5月 前法務省民事局付 郡谷大輔はしがき